【犬の健康】どうして噛むの? 愛犬の「噛む」行動、その理由と上手な付き合い方
分かれば安心!犬が「噛む」様々な理由
「うちの子、なんでも噛んじゃう…」
「子犬の甘噛みがなかなか治らない…」
「大事なものを噛まれて困っている…」
愛犬の「噛む」行動について、こんな悩みや疑問を持ったことはありませんか?
犬にとって「噛む」ことは、実はとても自然で本能的な行動です。
しかし、その理由や意味合いは様々で、時には私たち飼い主を悩ませる問題行動につながることもあります。
この記事では、犬がなぜ噛むのか、その理由を深く掘り下げ、愛犬の噛む行動と上手に付き合っていくためのヒントを、最新の知見を交えてご紹介します。
なぜ犬は「噛む」の? 年齢や状況で異なる理由
犬が噛む理由は一つではありません。年齢やその時の状況、そして過去の経験や学習によっても、行動は形成されます。
【子犬期によく見られる理由】
- 好奇心と探索: 人間が手で触って物を確かめるように、子犬は口を使って周りの世界を探検し、学習します。「これは何かな?」と確かめるために、手当たり次第に噛んでみるのです。
- 歯の生え変わり: 生後数ヶ月頃、乳歯から永久歯に生え変わる時期は、歯茎がムズムズして痒くなります。その不快感を和らげるために、何かを噛みたくなるのです。
- 遊びと社会化: 兄弟犬や母犬とじゃれ合いながら噛みつく「甘噛み」は、遊びの一環であり、どのくらいの力で噛むと相手が痛がるのか、コミュニケーションの方法などを学ぶ大切なプロセスです。 ただし、この時期に人の手足を噛むことを許容しすぎると、成犬になってもその癖が残ってしまうことがあるため、早い段階での適切な対応が重要です。
【成犬にも見られる理由】
- 本能的な欲求: 狩猟動物としての名残から、何かを噛むこと自体に満足感を覚えます。単純に「噛むのが楽しい!」と感じていることもあります。
- ストレスや不安の解消: 運動不足、長時間の留守番、環境の変化、大きな音など、ストレスや不安を感じると、噛むことで気持ちを落ち着かせようとすることがあります。
- 退屈しのぎ: 体力や知的好奇心が満たされず退屈していると、手持ち無沙汰から身の回りにあるものを噛んでしまうことがあります。
- 気を引きたい・要求(学習による強化): 「噛んだら飼い主さんが構ってくれた」「噛んだら嫌なことをやめてもらえた」という経験があると、犬は「噛むことで自分の要求が通る」と学習し、その行動が強化されてしまうことがあります。
- 体の不調(まれなケース): 口の中に痛みや違和感(口内炎、歯周病など)がある場合に、それを紛らわすために噛むことも考えられます。
「噛む」ことのメリットもある!
問題行動として捉えられがちな「噛む」行動ですが、適切な対象物(おもちゃなど)に対して行われる場合は、犬にとって良い面もあります。
- 歯の健康: 噛むことで歯垢が取れやすくなり、顎の筋肉も鍛えられます。
- ストレス解消: 夢中で噛むことに集中することで、ストレス発散になります。
- 欲求充足: 「噛みたい」という本能的な欲求が満たされ、精神的な安定につながります。
注意が必要な「問題となる噛み」とその前のサイン
すべての噛む行動が問題ないわけではありません。以下のような場合は注意が必要です。
- 破壊行動: 家具、壁、電気コード、スリッパなど、噛んではいけない物を壊してしまう。
- 人への過度な甘噛み・本気噛み:
- 甘噛み: 子犬の甘噛みがいつまでも治らない、加減ができず強く噛んでしまう。
- 本気噛み: 恐怖や警戒心、攻撃性から人を本気で噛んでしまう。
【重要:噛む前のサイン(ボディランゲージ)を見逃さないで!】
犬は多くの場合、本気で噛む前に何らかのサインを出しています。
- 唸る (うなる)
- 歯を見せる (唇をまくり上げる)
- 体を硬直させる
- 耳を後ろに伏せる、またはピンと立てる
- 尻尾の動きが止まる、または小刻みに振る
- じっと見つめる
これらのサインは、「やめてほしい」「怖い」「近づかないで」という犬からのメッセージです。これらの前兆を見逃さず、犬が不快に感じている原因を取り除いたり、早めに距離を取ったり、状況を変えることで、噛みつき事故を未然に防ぐことができます。
上手な付き合い方と対処法:罰ではなく「良い行動を教える」
愛犬の噛む行動と上手に付き合っていくためには、理由を理解した上で、罰を与えるのではなく、望ましい行動を教え、強化していくことが基本です。
【やってはいけない対応】
- 大声で叱る、叩くなどの罰: これらの方法は、犬をさらに興奮させたり、恐怖心や攻撃性を煽ったりするだけで、逆効果になることが多いです。飼い主さんとの信頼関係も損ねてしまいます。
【推奨される対応】
- 噛んでも良いものを与える: 犬用の安全なガムやおもちゃを十分に与え、「これを噛むのはOK!」と明確に教えます。様々な硬さや素材のものをローテーションするのも良いでしょう。
- 環境を整える: 噛まれて困るものは、愛犬の届かない場所に片付けます。
- 冷静な対応と一貫性:
- 甘噛みされたら: 感情的にならず、冷静に「痛い」と伝え、その場を離れるか遊びを中断します。「噛むと楽しいことが終わる」と学習させます。
- コマンド: 「放せ(ちょうだい)」や「待て」などのコマンドを教え、できたら褒めます。
- リダイレクト: 噛んではいけないものを噛みそうになったら、おもちゃなど別のものに注意をそらします。
- 良い行動を強化する (ポジティブ・レインフォースメント):
- 噛まずにいられた時、おもちゃを上手に使えた時、指示に従えた時は、すかさず褒めてご褒美(おやつや好きな遊び)を与えましょう。
- 「噛まないでいると良いことがある」「指示に従うと嬉しいことがある」と学習させることで、望ましい行動が増えていきます。
- 「噛む=楽しいことが終わる」「噛まない=嬉しいことが続く」というルールを、家族全員で一貫して伝えることが非常に重要です。
- 根本原因へのアプローチ:
- エネルギー発散: 十分な運動(散歩、遊び)を確保します。
- 知的刺激: ノーズワークや知育トイで頭を使う機会を与え、退屈させない工夫をします。
- 安心できる環境: ストレスが原因の場合は、原因を取り除いたり、安心して休める場所(クレートなど)を用意したりすることも有効です。
- 困ったときは専門家へ: しつけや環境改善をしても噛み癖が改善しない場合や、攻撃的な本気噛みが見られる場合、飼い主さんが恐怖を感じるような場合は、無理をせず早めにドッグトレーナーや獣医師(行動治療に詳しい先生)に相談しましょう。
まとめ:愛犬の気持ちに寄り添って
犬の「噛む」行動は、彼らにとって自然な欲求であり、時にはストレスや不安を表現する大切なコミュニケーション手段でもあります。
ただ叱るのではなく、「なぜこの子は今、噛んでいるのだろう?」とその背景にある気持ちに寄り添い、根本的な原因を探ることが、長い目で見た本当の解決につながります。
犬の年齢や性格、生活環境によっても噛む理由や効果的な対処法は異なります。マニュアル通りにいかないことも多いでしょう。無理に一律の方法を押し付けず、あなたの愛犬の個性や状況をよく観察し、その子に合った方法を見つけてあげてください。
適切な知識を持ち、一貫性のある対応を心がけることで、愛犬の噛む行動と上手に付き合い、より良い関係を築いていくことができるはずです。